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Rubeola keratitis – 麻疹性角膜炎

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従来から「麻疹角膜炎では表層角膜炎が典型的病像で、一般的には自己限定的 self-limiting 」とされていました。
 http://www.emedicine.com/oph/topic101.htm
2008年5月、ギリシャのアテネ総合陸軍病院眼科から詳しい眼科検査結果が報告されました。健康若年成人のみ対象としていますが、4タイプに分類され、麻しんに特異的と思われる病型も報告されました。全例の経過は良好でした。

一方、麻しんはアジアやアフリカ諸国では今なお子供たちの失明原因として、ビタミンA欠乏症 vitamin A deficiencyとともに主因となっています。およそ140万人が失明している、毎年最大で50万人が新たに失明すると推定されています。多くの子供は失明したあと死亡しているようです。特に、アフリカでは麻しんに関連し、角膜潰瘍を来たし、黒目に混濁(角膜瘢痕)を残すことがよくみられます。

通常、麻疹による角膜炎は、なんら合併症を来たさず治るのに、なぜアジアやアフリカの子供たちの失明原因となっているのか?
Prevention of Childhood Blindness Teaching Set
Author: L. Amparo Hernandez-Duran, S. Kotiankar, M. McGavin, C. Gilbert
Publisher: ICEH [International Centre for Eye Health]
Date: 1998, updated 2007
 http://www.iceh.org.uk/eresources/teachingset_04.asp
に詳しく記載されていますので、ご覧下さい(英文)。
一部抄訳 » http://blog.m3.com/blogosphere/20080803/1

Cornea. 2008 May;27(4):411-6.
 Web Site「CORNEA The Journal of Cornea and External Disease
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18434843
    Rubeola keratitis: a photographic study of corneal lesions.
    Pavlopoulos GP, Giannakos GI, Theodosiadis PG, Moschos MM, Iliakis EK, Theodosiadis GP.
    Department of Ophthalmology, 401 General Army Hospital of Athens, Athens, Greece.
目的:麻疹角膜炎の所見について詳細な記述は、医学書や報文にはありません。略
方法:麻疹角膜炎を来たした若年成人男性17例 34眼を対象として、検査は皮疹発現3.6日後に行った。略
結果:眼症状は、異物感 88%、羞明(まぶしい) 65%、涙流 65%、灼熱感 47%。視力の障害なし 26%、軽度障害あり 71%。合併頻度(眼数)は結膜炎 74%、角膜炎 100%。角膜の撮影画像から、角膜病変を4タイプに分類した:
 ローズベンガル液にのみ染色される小さい点状上皮病変 100%
 小さい円形上皮欠損またはそれらが合体したより大きい不整な上皮欠損 100%
 大きい、または微小の糸状物 39%
 標的(を呈する)病変 target lesion 100% (ローズベンガル液およびフルオレセイン液、両液を点眼したときのみ検出)

 標的(を呈する)病変 target lesion の輪郭はローズベンガル液で染色され、両液で交互に染色される同心円帯で構成されていた。
角膜炎は完全に上皮に限局していた。合併症を来たさず全症例で徐々に病変は消失した。
結論:健康若年成人にみらる麻疹角膜炎は良性の経過である。麻疹角膜炎に特異的な標的病変を認識することで、鑑別診断の助けとなり伝染を予防できるのではないだろうか。

抄訳はここまで

※1 target lesion (麻疹性角膜炎に特徴的な所見
target lesion - Rubeola keratitisサイズ(直径)0.1-0.8mm
2重染色法による病変(イメージ図):ローズベンガル rose Bengal液で外の輪郭(必ず)と中心が赤く染まり、フルオレセイン fluorescein 染色で輪郭の内側が緑色に染色される。”標的"、"的"状を呈する。

※2 麻疹(麻しん)は rubeola または measles です。rubella は風疹(三日ばしか)のことです。米国などでは、今でもMMRワクチン measles-mumps-rubella vaccine [順に、はしか(麻疹)-おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)-風疹]が予防接種に用いられているようですが、日本では、安全面から混合ワクチンは2種混合 MRワクチン measles-rubella vaccine [はしか-風疹]となっています。

   ICD10コード
麻疹性角結膜炎 B058 H192
麻疹性角膜炎 B058 H192

Written by medqa

2008/08/03 @ 17:37

カテゴリー: EBM

2件のフィードバック

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  1. 麻しんに関連した角膜潰瘍

    麻疹(麻しん)では、角膜上皮に限局した表層角膜炎を来たしますが、経過は良好です。 http://www.medqa.jp/2008/08/rubeola-keratit.htmlしかし、アフリカ、アジ…

  2. アフリカにおける麻疹後の失明予防と治療

         (Section 10. Prevention and Treatment of Measles の一部抄訳 ※)ワクチン接種後、麻しんに対する免疫が得られます。WHO等の活動で多くの国々で…


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