Archive for 8月 2008
malaria – anti-malaria mosquito net Olyset®Net
マラリアは、世界のどこかで30秒毎に子供の命を奪っています。
1年間に3億5000万人から5億人が感染し、100万人が死亡していますが、その多くがアフリカの子どもです。マラリアによる死者の90%はアフリカで、子どもの全死亡者の約5分の1となっています。
http://www.unicef.org/health/index_malaria.html
「殺虫剤処理を施した蚊帳を使用することによって、5歳未満児の死亡率を最大で25%低下させることができます。」
http://www.unicef.or.jp/children/children_now/zimbabwe/sek_zimbab_04.html
解説委員室ブログ:NHKブログ | 時論公論 | 時論公論 「アフリカ支援を考える」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/9141.html
2008年05月26日 (月)時論公論 「アフリカ支援を考える」
引 用
<課題> 国際的にも評価されている日本のマラリア蔓延防止の取組みは、今年2月、ブッシュ大統領が蚊帳の生産工場を訪ね、タンザニアだけで半年間で520万張りを新たに無料配布する、と発表したことでさらに広く知られるようになりました。しかし、大統領訪問のインパクトがあまりに大きく、アメリカの技術による蚊帳、と思っている市民もあるほどです。・・下略・・
ブッシュ米国大統領夫妻がタンザニアのオリセット®ネット工場を訪問
http://www.olyset-net.jp/2008/02/post-1.html
通常の蚊帳(かや かちょう mosquito net)は破れていたり、不適切な使い方をすると蚊帳の中に蚊が入り、血を吸われるが、ピレスロイド系殺虫剤で前処理を施されていると、蚊が入り口を探している間に殺虫剤に触れて死ぬ。住友化学「オリセット®ネット」anti-malaria mosquito net (Olyset® Net)では、ペルメトリン Permethrin とよばれる合成ピレスロイド系殺虫剤が繊維内に練り込まれています。繊維表面のペルメトリンが洗濯などで流れても、繊維内部から薬剤が表面に移動するため、アフリカでは少なくとも5年間使用可能です。試験例では使用開始から7年経過後も予防効果を示したそうです。
http://www.mofa.go.jp/policy/oda/white/2007/ODA2007/html/column/cl01002.htm
http://www.sumitomo-chem.co.jp/cgi-bin/research/list_e.cgi?year=2006&number=02
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dengue hemorrhagic fever デング出血熱と子ども
毎年、デング出血熱 DHF 50万人 – 死亡率 2.5% / デング熱 DF 5000万人
デング熱 dengue fever (DF)は、節足動物媒介性ウイルス疾患 arthropod-borne viral disease の1つ(主に、ネッタイシマカ Aedes aegypti が媒介)で、全世界で患者が急増しています。デング熱は自然治癒する一過性の熱性疾患ですが、血小板減少症 thrombocytopenia と血管透過性亢進による血漿漏出 increased vascular permeabilityを特徴とするデング出血熱 dengue hemorrhagic fever DHFなどを合併し、死亡することがあるため、今日非常に関心が高まっています。
Exp Biol Med (Maywood). 2008 Apr;233(4):401-8.
Alternate hypothesis on the pathogenesis of dengue hemorrhagic fever (DHF)/dengue shock syndrome (DSS) in dengue virus infection.
Noisakran S, Perng GC.
Medical Biotechnology Unit, National Center for Genetic Engineering and Biotechnology, National Science and Technology Development Agency, Pathumthani, 12120, Thailand.
1年間の新規デング熱患者 推計 5000万人から1億人
このうち、デング出血熱 (DHF) / デング熱ショック症候群 dengue shock syndrome (DSS)の発症は 20万人から 50万人
死亡率と関係する重症型 DHF/DSSは約 5%で、15歳未満の子どもが圧倒的に多い。
デング熱ウイルス(デングウイルス)は日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科ですが、日本脳炎ウイルスにおけるブタのような増幅動物は存在せず、ヒト→蚊→ヒトの感染環を形成します。
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_50/k04_50.html
Global burden of dengue
デング熱による世界負担
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs117/en/
[一部抄訳] デング熱 dengue は、最近数十年で世界中で劇的に増加した。今では25億人余り、世界人口の5分の2がデング熱のリスクを有する。世界保健機関 WHOの推測によると、毎年、全世界で 5,000万人のデング熱ウイルス感染の可能性がある。
2007年だけで、南米、北米のデング熱患者の報告数は890,000人を超えており、そのうち26,000人がデング出血熱 DHFであった。
アフリカ、南米、北米、地中海東岸、東南アジア、西太平洋の100カ国以上で今や風土病となっている。東南アジア、西太平洋の諸国での発生は、特に深刻である。1970年以前は、わずか9カ国が DHFの流行を経験していたが、1995年までにその数は4倍となった。
http://www.who.int/csr/disease/dengue/impact/en/index.html
患者数の増加だけでなく、爆発的なアウトブレークが起きている。2007年にはベネズエラ Venezuelaで 80,000人超の報告があり、デング出血熱 DHFは6,000人を超えた。
デング熱の流行中、以前にウイルスに暴露したことのない人々の感染率は 40%~50%と頻繁に起こるが、80%~90%までなりうる。
毎年、DHF推計患者50万人の入院治療が必要となり、そのほとんどが子どもであり、そのうち約 2.5%が死亡するとされている。
DHF患者の死亡率は、適切な治療が行われないと、20%を越える。本疾患に熟知した医療スタッフによる医療を受ける幅広い機会があると、死亡率を 1%未満とすることが可能である。
下略・・ここまで
※ オリンピック開催中の北京の情報(Google 検索で上位にヒットしたもの)
新華通信 Xinhua 2006年の報道
Beijing reports two dengue fever cases
Updated: 2006-09-30 10:18
http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-09/30/content_700263.htm
廣東省(中国南部)では2006年夏、465人がデング熱に罹患した(死亡の報告なし)。
北京では、フィリピンからの帰国者 29才、男性(2006年9月16日)、インドからの帰国者1人(2006年9月13日)、計2人がデング熱と診断され、北京友誼病院を退院したと、北京市衛生局が発表。
追 加 [京華時報 電子版] 北京市に住む男性(30歳)デング熱と診断 2008-08-16(北京市衛生局)
http://office.kyodo.co.jp/sports/olympics/beijing/kyodonews/topics2/073150.html
など。
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rabies – 日本など極東アジアにおけるヒト狂犬病
2006年のヒト狂犬病に関する情報データが下記論文に収録されなかったようですので、記事、論文要約を併記します。
2006年11月、36年ぶりにヒト狂犬病(2例)が発生しました。
京都市(60才代、男性)と横浜市(65才、男性)。ともにフィリピンで犬にかまれ発症。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kikou/200612/502130.html
「日本国内では、ヒトでは1954年、動物では1957年を最後に狂犬病の発生はなく、今回の2件の輸入感染症例も1970年以来、36年ぶり。」
京都市の症例は、恐水症状、恐風症状を来たすも、本人はフィリピン滞在時の動物接触を否定したため、診断が遅れた。後に、同行者から接触情報が得られた。脳炎発症後には問診だけでは正確な情報とならない可能性がある旨、下記のホームページ本文内に記載あり。
[関連情報ページ]
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200704/502986.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/200611/501961.html
Dev Biol (Basel). 2008;131:55-61.
The rabies situation in Far East Asia.
Fu ZF.
Department of Pathology, University of Georgia, Athens, GA 30606, USA.
[要約の邦訳]
極東アジアにおける狂犬病 rabies の疫学調査を行った。国際獣疫事務局 OIE から極東アジア諸国へアンケート調査書を発送し、8件の回答があった。回答結果のほかに最新の刊行物などにより、これらの国々のデータを収集した。
2006年では、29,000人超の死亡者が報告された。狂犬病による世界中のヒトの死亡例の半数を超えていた。
同年の報告では数カ国または地域(日本, シンガポール, 韓国, マレーシア, 香港, 台湾 Japan, Singapore, South Korea, Malaysia, Hong Kong, Taiwan)のみヒト狂犬病の報告例がなかった。
狂犬病が風土病として流行している国の多くでは、この10年間ヒト狂犬病患者の数に大きな変化はなかった。着実に減少している国は唯一、タイ国で年間の症例数は200人から20人に減少した。
最も劇的な変化は中国で観察された。1980年代の年間5,000人程度から1990年代半ばに約 160人までヒト狂犬病患者は減少した。しかし、その後この傾向は逆転した。過去10年以上着実に増加し、2006年の報告では3,200人を超えた。
これらの国々で狂犬病が流行する要因は数多くあるが、唯一最重要の因子は飼い犬に免疫がなく、狂犬病がヒトに伝染することである。
犬のワクチン接種は、多くの国々で 5%以下であり、犬から犬、犬からヒトへの狂犬病伝染を防止できない。極東アジアでのヒト狂犬病発生をストップするためには、これらの国で犬に対する集団予防接種キャンペーンを開始することが最も重要である。
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日本におけるMMRワクチン接種中止の理由
MMRワクチン:乾燥弱毒生麻しん(M)おたふくかぜ(M)風しん(R)混合ワクチン
Pediatr Infect Dis J. 1991 Mar;10(3):209-13.
Aseptic meningitis as a complication of mumps vaccination.
Sugiura A, Yamada A.
Department of Measles Virus, National Institute of Health, Tokyo, Japan.
[要約の意訳]
MMR 3価(3種混合)ワクチンに含まれていた「おたふくかぜワクチン Urabe Am9株」が原因で、日本国内ではワクチン接種者 630,157人中、少なくとも 311人が本ワクチンに関連した髄膜炎を発症した。患者311人のうち96人の脳脊髄液からワクチン由来のおたふくかぜウイルスが検出された。
非常に高い頻度となったのは、調査中にこの問題に反対のマスコミに騒がれたことも一部あるかもしれない。
ワクチン導入後1年間の臨床像を解析したところ、MMRに関連した髄膜炎患者(165例)は単価おたふくかぜワクチン Urabe Am9株接種後の髄膜炎発症患者(27例)と同様の発生頻度であった。ワクチンに関連した髄膜炎は、一般的に軽症で後遺症は発生しなかった。合併症は女児より男児に多かった(1989年の全国調査結果. 国立感染症研究所発表)。
1989年から数年の間に、おたふくかぜワクチン Urabe Am9株が無菌性髄膜炎の原因であることは、数カ国の研究者らによるヌクレオチド(ジデオキシヌクレオチド) 配列解析などにより遺伝子学的に確認されました。しかし、その後日本は欧米とは異なる予防接種政策を決定します。
1993年、MMRワクチン接種中止
1994年、予防接種法一部改正。義務接種から努力義務接種、集団接種から個別接種。
一方、[麻疹・風疹混合ワクチン – Wikipediaより] 海外では105ヶ国でMMRワクチンの定期接種(2004年現在)が行われています。イギリスなどはMMRに含まれるワクチン株をUrabe Am9株からJeryl Lynn株に変更して接種を継続しています。
米国は1989年からMMRワクチン2回接種、豪州は1994年からbooster shotの方法で、麻疹については、ほとんど根絶しました。
フランスなどでは、おたふく風邪ワクチンとしてUrabe Am9株を継続使用しているようです。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/txt/s0304-4.txt
「Jeryl Lynnというのが広く使われている株です。それは大体100万人に1人ぐらいしか髄膜炎を起こしません。ただ、Jeryl Lynnの場合は、抗体の陽転率が日本の株に比べて低いということは言われています。ですから、Jeryl Lynnをやる以上は少なくとも2回やらないと確実に流行のコントロールは難しいでしょう。
そこで、抗体獲得率が低いということで、フランスのアベンティスはUrabe AM9を使っています。フランスのUrabe AM9のデータですと、大体6万分の1というのが髄膜炎の発症率です。ですから、Jeryl Lynnに比べて高いですけれども抗体陽転率がいいし、下 略」
MMRワクチン後の髄膜炎など詳しい被害状況は下記ページを参照して下さい。
MMRワクチン接種による被害発生の原因究明に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a154190.htm
衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチン接種による被害発生の原因究明に関する質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b154190.htm
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他の医療先進国との医学教育格差
日本の医学生と研修医は、医療先進国に比べて人数が少ないだけではありません。
たとえば、
ゴードン ノエル先生 Gordon L.Noel, MD は2008年1月の講演会
http://www.ircme.u-tokyo.ac.jp/workshop_list_2007.html#Noel
にて、
日本の医学生と研修医は(2005年の観察)、
[スライド1枚引用]
・ Motivated to become excellent physicians
※ 優秀な医師になりたい意欲がある
(※注 ブログ投稿者による訳です)
・ Eager to learn 勉強熱心
・ Willing to spend very long hours
長時間働くことをいとわない
・ Exceptionally flexible 順応性がある
・ Supportive of each other 互いに助け合える
であるが、日本の医学部上級生は、欧米の学生と比較すると臨床経験がはるかに少ないことなど述べています。
[スライド1枚引用]
・ less understanding of pathophysiology 病態生理の理解が少ない
・ less experience with clinical reasoning
臨床判断の経験が乏しい
・ more limited differential diagnosis
挙げられる鑑別診断が少ない
・ almost no experience with direct patient management
直接の患者対応の経験がほとんどない
東京大学医学教育国際協力研究センターの学外客員研究員である
自治医科大学臨床感染症センター 感染症科 准教授 矢野 晴美先生も
ご自身のブログで鋭く指摘しています。
エントリー「日本の初期研修終了後の医師の臨床能力」
Saturday, July 5, 2008, 06:46 PM
http://www.harumigomi.com/blog/index.php?entry=entry080705-184657
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発展途上国のはしかとビタミンA欠乏症
世界子供白書2002
http://www.unicef.or.jp/library/library_pdf.html
予防接種ともうひとつ……
「世界中で1億人近い幼児に影響を及ぼしているビタミンA欠乏症は、開発途上国の子どもを失明させる原因の筆頭である。たとえ欠乏の程度が軽くても、幼児の免疫システムを阻害し、はしか、マラリア、下痢といった、子どもの死因になりやすい病気への抵抗力を弱めてしまう。・・下略・・」
「2005年、はしかが原因による死亡件数は推定34万5,000人(90%は5歳未満の子ども)ですが、その多くは深刻な下痢や肺炎、脳炎を同時に発症し、命を落としています。」
http://www.unicef.or.jp/j8/g8/pdf/06.pdf
ビタミンA大量投与は2歳未満児の麻疹による死亡リスク軽減/最新のCochrane Reviewsより
Huiming Y, Chaomin W, Meng M. Vitamin A for treating measles in children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2005, Issue 4. Art. No.: CD001479. DOI: 10.1002/14651858.CD001479.pub3.
http://www.cochrane.org/reviews/en/ab001479.html
Two megadoses of vitamin A lowers the risk of death from measles in hospitalized children under the age of two years, but not in all children with measles
結果:変量効果モデルを使いすべての研究を統合したとき、ビタミンA補給グループの死亡リスクは有意に減少しなかった (相対危険度RR 0.70; 95% 信頼区間CI 0.42~1.15)。
200,000 国際単位IU のビタミンA を連日2回補給すると、2歳未満の小児の死亡リスク (相対危険度 0.18; 95% 信頼区間 0.03~0.61) および肺炎に特定した死亡リスク (相対危険度 0.33; 信頼区間 CI 0.08~0.92)は減少した。
ビタミンA 1回補給では麻しんにかかった子供の死亡リスクが減少するとのエビデンスはなかった。2回補給によりクループ croup は減少したが、肺炎や下痢の頻度は有意に減少しなかった。著者の結論(一部):補給回数1回と2回を直接比較した試験はなかった。
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